フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き

 

 

ジョン・コルベット『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』 – カンパニー社

 楽しく読めた。聴取の手引き、聴き方の手引きというのが面白い。即興音楽だけでなく、難しそうだとか、敷居が高そうとされている音楽は確かにたくさんある。それは~そうという作者不明のイメージにしか過ぎない。過ぎないが、イメージの力は強い。強いがイメージというのはあくまで想像でしかない偏見、偏ったものの見方ともいえるのではないだろうか。音楽だけでなく、こういうことは我々が生きている社会においてもごくごくに普通あることだ。音楽だと無視されるくらいですむだろうが、これが人間同士だと、愚かなるかな無視すらもできなくなることが多々ある。正見=正しくものを見よということを2000年以上も前にブッダは説いている。2000年以上たった今でもその教えはばりばり有効。

 本書では即興音楽に対しユーモアを交えながら、(ユーモアの感じがフランスっぽく感じたので作者はフランスの方かなと読み終わるまで思っていたが、アメリカの方だった。)順序だてて聴取の仕方を解説することによって、即興音楽に包まれている闇のベールがはがされていくような感じは読んでいて痛快だった。音楽の聴き方なんて千差万別でいいんだろうけど、あえて聴き方を手引かずにはおられななかったであろう著者の即興音楽への愛、そして愛し方にやられたので、前々から興味のあったデレク・ベイリーを買いに走った。こういう愛は人を動かす。